ギーとラード


NHKのプロフェッショナルという番組で、東京上野の115年続く老舗洋食店を放映していました。

カツレツを始めポークソテー、タンシチュー、エビフライなど、どれをとっても美味しそうでプロの技が光る料理の数々。創業当初から現在に至るまで、舌の肥えたお客さんは勿論、多くの著名人や名だたる料理人たちをも感動させる絶妙な揚げ具合、味付けで老舗の看板を守ってきたそうです。

四代目店主の、島田良彦さんは長年信頼している精肉業者が納入した豚肉を毎日厳しい目でチェックします。少しでも満足できない肉は仕入れません。

合格した豚肉をなんとも絶妙な温度で一枚一枚丁寧に揚げていきます。

私が目を見張ったのは、その揚げ油のきれいな事です。

すると、島田さんは「油が命です」と言い切りました。

なんと、毎日、吟味された豚肉に付いている背油をきれいに取って、それを一時間かけて

ラードを作るのだそうです。できたラードを味見しながら「旨い。うん旨い。でもこれは私だけがわかればいい味です」と言いました。

ラードは飽和脂肪酸です。酸化されにくく、熱にも強いことから揚げ油としてはとても適した油です。実際にカツレツを何度も通しているにもかかわらず、画面で見る油は薄い黄金色

でした。製法もいたってシンプル。美味しい豚肉から抽出しただけ。このお店の揚げ物がおいしくないわけがありません。もちろん過剰摂取は脂質異常症や動脈硬化の原因になりますが、たまに食べる揚げ物ならサラダ油で揚げるよりも油の質も安定していますし、何より美味しいです。


料理家のホルトハウス房子さんがラードを料理に使ったとき、ラードは買うんですかと尋ねられ、「まさか。自分で作るんですよ」と言っていたのを聞いて、私はかっこいい!と感動し、それ以来、家でも作ることにしました。愛知県の保美豚(ほうびとん)という丁寧に育てられた素晴らしく美味しい豚の背油が1㎏300円ほどで手に入ります。ジャム瓶で3本くらいはできます。揚げ油には足りませんが、主に炒め物やチャーハンに使っています。


同じように、動物性のいい油として注目を浴びている油にギーがあります。

こちらはバターを加熱して不純物をろ過した、やはり安定性の高い油です。しかし、日本で買うには値段が高く、自分でバターを買って作ったとしてもコストがかかります。また、独特な香り故、作る料理がなかなか思い浮かびません。せいぜい、カレーに使う程度になって今も冷蔵庫の隅に眠っています。


ところがある日、旅好きの娘から一通のLINEが来ました。

「今、トルコにいるんだけど」(旅から旅でこういう報告は珍しくありません)

「ギーの使い方がわかったの!」彼女は旅先のトルコでシリア難民の方からシリア料理を教えてもらい、そこで作ったあらゆる料理にギーが使われていたそうです。1㎏缶に入ったギーをたっぷり取って米を炒めたり、ひよこ豆のフムスに、熱したギーをジュワッとかけたり、とにかくふんだんに使うのだそうです。日本で売っている小さなギーの小瓶は一品でなくなる量だそうです。「味も最高に美味しかったよ!」

写真はその時の料理です。


前述の上野の名店では、島田さん始め、お店で働く方は皆さんスリムでしたし、

何よりお肌がきれい。

いい食材を扱っているお店かどうかはシェフの肌を見ればわかります。

そのお店がいい油を使っているか、悪い油を使っているか言わずもがな、ですね。


お惣菜の揚げ物を買うとき、外食でてんぷらや唐揚げ、とんかつを食べるとき、それが

どんな油で揚げたかな?と想像してみてください。安価な揚げ物にいい油...それは無理ですよね。油(脂質)は身体にとって大事な栄養素。細胞膜の材料になったり、ホルモンの材料にもなります。酸化した油、化学溶剤で抽出した油、トランス脂肪酸の摂り過ぎは炎症のもと。食べ物の先にちょっと想像力を働かせて、なるべく細胞にダメージを与える油を避けるのって大事ですよね。












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